最高!
最高だよ舞城さん!マジで最高だ。
主人公の
奈津川四郎は、アメリカはサンディエゴ、病院で医師を勤めているが母親が何者かに襲われて意識不明の重体に陥っていることを聞き地元福井に帰郷する。そこで、母親の遭った被害は連続事件の一環だと知り、犯人捜しに乗り出す…
この本のテーマを自分的に解釈するなら「自分の生活空間だけが世界のすべてで、どうでもいいことがたくさんある。それでもムカつくことは自分でちゃんと解決しろ」と言うことだと思う。
奈津川四郎は探偵ではない。
警察でもなければヤクザでもない。しかしそれは、事件の解決を他人に委ねて自分は大人しく母親の隣で甲斐甲斐しく介護して不運を嘆いていればいいという問題ではない。役割分担なんてものはあくまで、社会形成の一環で、効率化の手段として生まれたもので、母親が死にそうな時にそんな道理に従うなんてつまり本音は「犯人はムカつくけど俺素人だし。今から試行錯誤しても意味無さそうだし。意味無いことするのはめんどくさい、辛い」
辛い空回りでも、あたりまえの感情のある人間なら自分で解決するはずなんだ。それなのに、愛が足りないとそれを他人に任せて、大切な『自分の時間』を護ろうとする。…普通の一市民が、家族より大事な『自分の時間』を持ってるのかね?
この本は普通の事を描いている。つまり、大切な人を危険な目に遭わせた奴への復讐。その、愛の深さ。
今作は
家族愛だがはっきり言って、今の小説で愛を本気で説いているのは舞城王太郎だけだ。全力で説いて必死さが滲み出るのは舞城王太郎だけだ。青春小説の手法で、推理小説を抹殺出来るのは
舞城王太郎だけだ。
(これで俺の読書の底の浅さを分かってもらえれば幸い)
#本当は次作の「暗闇の中で子供」を書くつもりだったが前置きが必要以上に長くなったのでそのままUP